教えることの復権

教えることの復権 (ちくま新書)

教えることの復権 (ちくま新書)

 大村はま先生と苅谷剛彦氏、そしてその奥さんの共著となる一冊。僕の尊敬する大村はま先生の実践や考え方が、対談形式で読めるところが嬉しい。その実践もさることながら、エネルギーにあふれた優しさにとてもあこがれる。こういうように優れた実践がありつつも、曇りのないまなざしで子どもに向かえる教員でありたいと思う。
 「教えるためにてびきをしたくらいでは、個性は失われない」という言葉は、その優れた実践があるだけに重たいし、そこにたどり着くためには生半可なことではいかないなあと思う。
 大村はま先生と重なるような感じで思い出すのは、前任校で出会った言語指導の先生だ。嘱託で江戸川区の難聴言語の専門家として努めていらした方で、年2回来てもらっていた。どんな落ち着きのない子どもでも、不思議とその先生の前に座るとしゃんとしてきちんということを聞いていた。確かな業(わざ)と愛情が、迫力となって子どもに伝わっていたように感じたのをよく覚えている。