岩手、日本の原風景へ 8月9日 岩泉〜盛岡〜田沢湖

 旅の朝はいつだって5時起きが基本だ。なんだか不思議と目が覚める。ユースで出会った他の旅人たちも同じことを言っていた。ただし今日はユースではないので目覚めても一人。7時半にご飯を食べ、龍仙洞へ出発。宿のおばちゃんがセブンに食いついて興味津々で話しかけてきた。

味のある古い宿。
 龍仙洞についたのは8時半。開くのが8時半のはずなのだが、なぜか大勢の人がすでに中に入っている様子。8時くらいから開いていたのかも。入り口の所には龍仙洞のわき水が出ていた。地元のおいしい水を飲むのも旅の楽しみだ。龍仙洞の入場券を買い、中に入る。この前入った滝観洞と違って、きっちり観光地として作られた安心感がある。観光地化されているからいまいちという人もいるだろうけど、そこはそれでそれぞれの味があるというもの。ヘルメットもカッパも長靴も必要ないので、気楽といえば気楽。しかし観光地化されているとはいえ、やはり鍾乳洞というのは神秘的。透明殿高い地底湖が水中でライトアップされ、ただただ美しい。ドラゴンブルーと言われる深い青の地底湖は、見ていて吸い込まれそうになる。




 今は観光地化されて安全な状態で見て歩くことができるけど、昔の探検して調査している段階のことを考えるとすごく恐ろしい。昔はこの地底湖やそこに至る地底川に船を浮かべて観光していたらしい。暗闇の中ランプだけとかで進んでいくことを考えると、えらく気合いの入った観光だと思う。
 写真もたくさんとったのだけど、狭いので三脚を置くわけにもいかず、F1.4のズミルックスで必死に手持ち撮影。死ぬほどとった割にはちゃんと写っているのは数枚。まあ、数枚でも撮れた分だけよしとしよう。





 川を挟んだ反対側には龍仙新洞という鍾乳洞もある。もとは龍仙洞とつながったひとつの鍾乳洞だったらしいが、川の浸食でぶったぎられて二つに分かれてしまったらしい。そちらの方は研究洞になっていて、博物館のようになっているんだけど、その微妙に安っぽい作りがとても好き。


鍾乳洞から出た直後に撮ろうとしたら、気温差で思いっきり結露。真っ白。
 龍仙洞を見終わったので、ここから盛岡を経由して田沢湖まで移動する予定。やや天気が良くないようだが、もしかしたら盛岡あたりで降られるかも。途中、峠道に新しく開通したトンネルがあるのだが、宿のおばちゃんが「この車なら、トンネルじゃなくて旧道を通った方がおもしろいと思うよ」と言っていたので、途中で旧道に入ってみた。路面には黒々としたタイヤ痕が残っていて、近所のおにいちゃんたちの遊び場になっているようだ。上から下まで一台も追いつかず、すれ違いもせず。楽しんで走ってきたら上から下まで10分間。ちょっとしたミニサーキットみたいな感じ?
 峠を越えてみると、さらさらと霧雨が降っていた。ビキニトップをつけていて走ってさえいれば濡れることはないのでそのまま止まらずに駆け抜ける。しかし、盛岡市内に入ってみるとさすがに信号で止まり始め、徐々に雨足も強くなってきている。どこかコンビニに入って幌につけ変えるか?と思っていたらそのうちに止んでしまった。
 そしてお待ちかね、盛岡インターの手前のローソンで「東北の鉄人」「サイボーグ」と数々の異名をとる沖野さんと待ち合わせだ。本当は後輩と合う予定だったのだけど、都合があわなくなってしまったので、予定を前倒しして沖野さんと食事をすることにしたのだ。一緒に宮城のゼロワンの鈴木さんが来る予定だったのだが、どうも高速でゲリラ豪雨にあってしまい、一度戻って足車に乗り換えてから来るらしい。
 そのローソンからすぐの所にあるぴょんぴょん舎に行き、冷麺を食べる。初めて食べたのでちょっとそのゴム的食感に驚いたけど、辛みのキムチをつっこんで食べるとおいしかった。沖野さんいわく「あとはパイロンのじゃじゃ麺かな」と言っていたので、八幡平の帰りに食べに行こうと思う。


 食べ終わってローソンに戻ると、鈴木さんも足車で到着。ここから田沢湖まで移動だが、どうも雨が来そうかどうか微妙なところ。僕は「大丈夫かな〜」なんて言ったのだけど、沖野さんは「いや、用心した方がいい!」と主張。確かに沖野さんと僕が一緒に走ったかつての東北ツーリングでは、1時間に50ミリの雨の中を走った実績がある。沖野さんと僕が走るのに、ナニもないはずがないと納得し、幌を張った。
 それはドンピシャで、田沢湖に向かう坂を登り始めると土砂降りの雨が降り始めた。フロントフェンダーが激しく雨をけたて、コーナーをまわる度に車内にも跳ね上げた水が浸入してくる。田沢湖に入ってすぐの駐車場で止まって、雨が一区切りつくまで一休み。ここは秋田県なのできりたんぽが名物で売っていたので、ちょっとおなかに入れた。


 沖野さんのバーキンは熱問題を解決するために、これから秋田のショップにドック入り。ここでお別れですが、僕と鈴木さんは田沢湖から山に入っていったところにある秘湯「乳頭温泉」へと出発。まだまだそぼ降る雨の中、屋根のある鈴木さんの足車がありがたい。

山の上はぐっしょりと濡れている。
 乳頭温泉まで舗装されているの?などなどの不安があったものの、きれいな舗装で乳頭温泉の奥の方までたどり着いた。唯一「孫六温泉」だけは、さらに奥地の道まで歩いて行かなくてはいけないようだけど、十分安心して行くことができる。

さらに奥の方に行く温泉もある。
 この旅で初めての露天風呂。付け足して言うなら混浴露天風呂だ。とは言ってもおじさんたちしかいないけど。やや熱い風呂で、個人的には長時間の入浴ができないので残念だけど、それでも有名な秘湯に入ったことはよい記念だ。泉質は「乳頭温泉」という名の通り、乳白色で濁ったお湯が非常に独特。出た後、お肌がつるつるで感激。


源泉がわいていて、それも乳白色。
 ここの宿もまた人気らしく、宿泊しようとしていたのだが、7月の時点で開いているのはもう9月半ばしかなかった。ここも自炊部があって、長期の湯治をしている客が多そうだった。入っている時に温泉うんちくのお兄ちゃんがずーっとしゃべりかけてきて、途中までは楽しかったけどだんだんうっとうしくなってきた。他の人も同様だったらしく、だんだん誰にも相手にされずにいた。どうも駐車場で車中泊で温泉に入っているらしい。宿に泊まれよ。
 風呂から出たら雨が上がっていた。セブンを置いた駐車場に戻る途中、田沢湖にきれいにガスがかかってきれいに見えた場所があったので写真を撮ってみた。難しくてきれいに撮れなかったけど。


 その後鈴木さんと別れ、田沢湖ユースホステルへ。ユースに入って受付をすませた後、ふと外を見ると大雨が!やばい、ボディカバーを掛けていなかった!長靴と傘を借りて大慌てでカバーを掛けた。せっかくうまいこと濡れずにきたのに、最後でびしょぬれ。残念。
 田沢湖のユースは国民宿舎と一緒になっていて、すごくきれいというわけではないけれど快適。お風呂も温泉になっていて、ちょっとぬるっとした泉質がちゃんと温泉している感じでよかった。
 食事は国民宿舎の食事と同じ。食堂がちょっと区切られていて、国民宿舎側の方が明らかに照明が明るい。薄暗い中、それでも食事はおいしかったのでご飯3杯いきました。一緒にユースに泊まっていた家族連れがいて、話してみるとユースの旅をかつてしていたらしい様子。僕なんかよりよっぽど旅慣れている感じで、子供がユースのもつ独特の雰囲気にちょっと戸惑っている様子がおもしろかった。またそのお母さんの車がやれた感じのカリーナEDで、旅に酷使されている感がまたなんとも言えず味があった。明日行く場所を聞いてみると、八幡平のユースらしい。一緒の宿に泊まる人がいるとちょっとうれしい。

田沢湖YHの食事。結構おいしい。
 ふと見ると、そのお母さんの飲んでいるビールが地元の地ビールらしく、聞いてみると宿の人に言えば出してくれるとのこと。さっぱり系でまあまあおいしいが、一本600円だったっけ、ちょっと高い。地ビールで旅先じゃなきゃ買わないよなあ。そういえば平泉の宿で飲んだ瓶ビールも600円だった。あそこも温泉で缶ビール売ってたから、宿で買う必要がなかったなあ。

 同室になったのは、自分を入れて5人のライダー&車の旅の男たち。話をしているとリミットの近くでバイトをしていたのでリミットのことを知っていたり、ローカル話で盛り上がった。酒を飲みながら、バイクの話とかのりピーの話で盛り上がった。ただでさえ遠野で書くことが多くて記録が追いつかないのに、まったく記録ができず。11時近くまで話してしまい、明日も朝早いよね、などといいつつ就寝。旅も半分を過ぎた。残りがだんだん短くなってきたのを感じる。