岩手、日本の原風景へ 8月5日 平泉

 昨日の夜、早く寝ただけあって朝5時頃にバッキリ目が覚めた。かばんからポメラを出し、旅の記憶を手繰りながら記録をつけはじめる。今回は記録用にポメラがあるので、すごく便利だ。キータッチはまあまあ。キーの奥行きがないのでちょっと打ちにくいと感じる部分もあるけど、手でつけるよりも数段早いし、なによりいつでも持ち歩いていける機動性の高さは特筆に値する。

宿から見た中尊寺方向。見える山は金鶏山

宿の前の道。道はよく整備されていて走りやすい。
 朝ご飯を宿で食べた後、中尊寺へ向かう。宿からすぐのところに毛越寺があるのだけれど、朝のうちに中尊寺へ行かないと人で混みそうだから、先に中尊寺へ。

道すがら、よくわからない小さな祠が何気なくある。何が祀られているわけでもない様子。

裏通りを通るのも好き。ドアの開けっ放しの長屋が味わい深い。
 平泉の市街地は非常に整備された道で歩くも走るも快適だが、一歩中尊寺へ入ると、鬱蒼とした木々が生い茂る山の中に入っていく感じとなる。ヘッドホン型のガイド装置を借り、中尊寺へ足を踏み入れた。月見坂と名付けられた参道の坂は結構な斜度で、外界と隔絶している寺院の中に入る雰囲気を醸し出している。

入り口にある弁慶の板碑。

月見坂の入り口。ここから中尊寺の始まり。

月見坂。一気に長い坂を登り、里と隔絶した世界に突入する。昔の人はこういう演出がうまい。
 入ったのは9時頃だったのだが、少ししたらもう団体の観光客が多くやってきて人混みの中を歩くような感じになってきた。最初の月見坂は人気のない道だったのに、帰り道は人だらけ。俗化されていてちょっと残念。

弁慶堂。いろいろ見たけど、義経より弁慶ネタの方が多いような気がする。

弁慶堂から見た平泉の景色。ちょっと歩いただけでも結構高く登ったのがわかる。

きれいにあじさいが咲いていた。そこかしこでさりげなく咲く花が美しい。

弁慶堂は坂の途中。さらにこれから登っていく。結構ハードだ。

意外と手前に中尊寺の本堂がある。有名な金色堂藤原氏の墓だけど、本堂ではない。本堂は超地味。本堂の横の茶室でお茶を飲むサービスもある。でも1回1000円は高い。


中尊寺と一言で言っても、中には多くのお堂がある。近所から移築された物もあるらしい。眼病に効く仏様なのか、「め」と書かれた絵馬が並んでいる構図は不思議。登りがちょっと不気味で怖い。

金色堂の手前の売店で、ちょっと懐かしい瓶ジュースが売っていた。備え付けの栓抜きの使い方を忘れていて、ちょっと戸惑った。

金色堂……が写真の建物の中にある。金色堂が傷まないように覆堂があるのだ。中は撮影禁止で残念。金ぴかで権力を分かりやすく誇示しているが、わびさびには欠ける。


中尊寺内にはあちこちに道がのびていて、見るところが多い。芭蕉の像もあった。奥の細道じゃね。

お堂の門の脇に石が積んである。日本人はありがたげな物を見るとすぐに石を積んだりお金をおいたりする。お金は下品な感じがするが、石は情緒があるような気もする。


周りに小さな祠や地蔵様がある。カメラをもっていると、ついこういうものに目がいってしまう。

中尊寺内のこのお寺の横で、なぜか鍼灸院がやっている。

白山神社と神楽を奉納する能楽堂がある。シンプルな作りだが美しい。

鳥居は大好きだ。なんでこんなにかっこいいんだろう。

丁度12時だった。


さらば中尊寺。月見坂を下る。

 金色堂はすごかったけど、それよりも周りの古色蒼然とした多くのお堂の方が好みだ。一番奥には白山神社能舞台がある。神社好きとしてはこっちの方に惹かれてしまうのだなあ。午前中は中尊寺でおしまい。ゆっくり写真を撮って楽しんだ。
 午後の毛越寺の前に、温泉&食事に行こうと思ってセブンに乗り込んだのだが、エンジンをかけたとたんパラパラと雨が降り始めた。上空に雲はない。いわゆる「狐の嫁入り」だ。このやろうと思いつつ、そのまま出発するが、パラパラが徐々バラバラになってきた。ドアをつけずに走っていたため、右腕だけびしょぬれの泥だらけ。いわゆるセブンエルボーとかセブンショルダーとかいうやつだ。
 10分くらい走って行った温泉で、露天風呂に入りつつ天候を見る。すっかり雨が上がったのを見計らってもう一度セブンに乗り込むが、やはりキーをひねったら雨が降り始めた。……狐め……何を狙っている。そしてトノカバーには猫の毛が……セブンには猫がよってくるようにできているのだろうか。まったく、狐とか猫とか、動物に祟られているのか俺は。


そばと温泉。ここでそばを食べるんじゃなくて、駅前でわんこそばを食べるんだった。
 戻ってきてセブンから降りたら雨がやんだ。腹が立つが、雨だとデジイチが使えないのでやんでくれるのはとても助かる。宿のほぼ隣が毛越寺といっていいほど近いので行くのは楽だ。まずは旧観自在王院庭園を歩く。浄土寺院の跡地が広い公園になっていて、男の子達がザリガニ釣りをしていた。どこも男の子はやることは同じだ。思わず笑った。

少年たちが橋の板をはがして糸を垂らしていた。壊すな。

薬師堂の跡地が広大な敷地で公園になっている。夜は真っ暗で超怖い。
 毛越寺にはいると、すぐに広い池が見える。その周りに寺や講堂の跡地が点在している。中尊寺ほど人がいないので、のんびり自分のペースで歩くことができるのがいい。以前はここにYHがあって、かつて7MLのチョー悪おじさんが泊まったことがあることを聞いていて楽しみにしていたのに、いまは宿坊はやっていないらしい。チョー残念だ。朝方の静かなときにこの庭園を歩きたかったなあ。


かつては多くの寺院が並んでいたという毛越寺。跡地だけが残っている場所も多い。

桔梗の花が美しい。
 そこかしこに写生をする中高生らしき子供たちが多数。何の集まりだったんだろう。絵画教室の合宿?絵を描く子供とお寺の組み合わせが何ともいえずフォトジェニックで、周りにいた外国人観光客がしきりと写真をとっっていた。ひどいのはのぞき込んで絵の写真撮ってるし。それはいかんだろう。俺も撮っているけど。


3時過ぎぐらいになっていたせいもあるが、人が少なくてほっとする。静かだ。

お堂の中のご本尊。神々しい。




 閉園時間ぎりぎりまで毛越寺で過ごす。入り口横の茶店で「ひやしあめ」を売っていたので飲んでみた。高校の修学旅行の時、京都でも見たことがある「ひやしあめ」だったのだが、その時はとにかく珍妙な味に驚いた覚えがある。この年になってもひやしあめ何かがわからずiPhone&Wikipediaで検索。どうやら麦芽の水飴を溶かしたものらしい。

 宿に戻ると食事にお出かけ。奥州市前沢というと……もちろん前沢牛ですよ、お父さん(誰がお父さんだ)。牧場直送の肉屋の直営店で霜降り和牛と生肉の握りを堪能。霜降り和牛を溶岩の切片で焼いて食べるのもうまかったが、前沢牛の握りは絶品。肉が、肉が〜口の中で〜溶けるの〜。まいう〜。幸せ〜。


口の中で溶ける前沢牛の握り。至福。
 帰ってきたら宿の近くの温泉につかり、戻ってからビールで仕上げ。極楽じゃ。今日はほとんど走らなかったけどよく歩いた。いつもドライブシューズはアディダスのカントリーなんだけど、歩くには底が薄くて適していない。中尊寺ではカントリーで歩いていたら足が痛くなってしまった。今回の旅は試しにホーキンスのトレッキングシューズを持ってきたので、午後からはきかえてみたらずっと楽だった。歩くときはちゃんと履き変えるようにしよう。