岩手、日本の原風景へ 8月6日 平泉〜花巻〜遠野

 目が覚めたのは朝5時。でも眠いのでもう一度寝る。再び起きたのは6時、出発の準備をしてもまだ十分余裕だ。ご飯を食べた後、すぐ近所の金鶏山に登る。山といっても標高100mほどの低い山だ。人工的に作られた山らしく、お経を入れた壷などが出土しているらしい。そしてここには義経の妻子の墓がある。歩いて5分、登って5分の超簡単ハイキングだ。

義経の妻子の墓。義経の人気から考えるにあまりにも粗末で小さい気もする。

低い山だが、頂上に向かってほぼ一直線に道が続くという直球ストレートな直登ルートなので結構疲れる。

頂上。特に何があるというわけでもなく。
 戻ってきてから簡単に準備を済ませ、花巻へ向けて出発。出発間際にやどのおばあちゃんが取り立てのキュウリを塩でもんでもたせてくれた。うれしい。花巻へは幹線道路ではなく、一本横にある広域農道を使って移動する。だいたい広域農道は信号もないし周りは畑ばかりだし、快調に飛ばせる気持ちのいい道が多い。九州に行ったときも広域農道のお世話になった。

とにかくまっすぐ。広域農道万歳。

キュウリうまし。
 とにかくまっすぐの道をひた走ると、一時間前後で花巻に到着。花巻のあたりを走っていると、時折市街地でも林があって、そこには神社や寺がある。昔ながらの「鎮守の森」がまだちゃんと残っていることをうらやましく思う。青少年育成の看板が「かあさんに いえないことは わるいこと」とあってちょっと憤慨。かあさんにいえないことだってたくさんある。そうやってみんなおとなになっていくんだ。
 花巻に着いた配意が、朝10時前ではどこもやっていないので、とりあえず宮沢賢治が「イギリス海岸」と名付けた場所へ行ってみる。日照りで水位が下がるとその特徴的な岩肌がドーバー海峡のように見えるらしいが、水量豊富な今では何がイギリスだかさっぱりわからないただの川っぺりだ。あとで遠野YHのおじちゃんに聞いたら、ダムができて水位が上がったそうな。なので、賢治が見たというイギリスを思わせるその岩肌は、年に一度か二度しか見られないらしい。

イギリス海岸にて。賢治のイラストからデザインされた柵。ドッテテドッテテ。

ゆったり流れる。空には鳶が悠々と旋回していた。

北上川は広い。

お日様が照って暑い暑い一日だった。
 その北上川をちょっと散策した後に、去年学校をやめたH野くんおすすめの「大沢温泉」へと向かう。一度は露天風呂に入らないと!と意気込んでいたのに、なんと清掃中で入れずじまい。せっかくの混浴露天風呂が……いや、混浴が目当てだったわけではない、決して。温泉そのものはやや熱めのお風呂で、あまり長い間入っていられないのが残念。でもいいお風呂でした。

大川温泉自炊部。この辺の温泉には自炊部が多くある。別棟で立派なホテルもあるが、こっちの方が味わい深い宿だ。

iPhoneで撮ってみた。川縁にある露天風呂。ああ、入りたかったなあ。
 ちょうどお昼の時間になったので沖野さんおすすめのピザ屋「5(チンクエ)」に行ってみることに。チンクエは本格的な石窯で焼くピザ屋だ。ランチメニューのピザ生地の包み焼きを食べて堪能してきた。
 店のご主人はどうも車好きのご様子。店内にはアルファやフィアットの絵が飾ってある。お店の「5(チンクエ)」といのも、FIAT500(チンクエチェント)からきているのかな?と思ってみたり。セブンの話で盛り上がり、ご主人は「いいなあこれ」「かっこいいなあ」連発で、出発の時も見送っていただきました。おいしかったです、ありがとうございました。

チンクエにて。パイ生地での包み焼き。美味なり。

おしゃれなお店。店内の石窯にチロチロと見える炎が暖かみを感じさせる。
 途中宮沢賢治記念館を通ったけど、そこはまあ省略。宮沢賢治が設計したという花壇がきれいでした。

記念館は結構郊外にあり、山の上にある感じ。花巻の町が遠い。


Designed by Kenjiの花壇。美しい。

デジイチをもっていると、つい花を撮りたくなる。カメラを構えていると、いつの間にか花が好きになってくる。

 そして今日のハイライトは滝観洞(ろうかんどう)だ。滝観洞は鍾乳洞で、なんといってもその一番奥にある滝がメインだ。花巻からひたすら走り、遠野を通り越し、iPhoneナビで走るが、入り組んだ道でなかなかたどり着かない。あげく現在位置を失って圏外だから今どこかわかりませんときたもんだ。わからなくなった直後に看板がでていたから助かったけど、結構ぎりぎりの時間で、なにもないところで暗くなっちゃったらどうしようか一瞬不安になった。ナビがあるとすごく楽だけど、自分で進む道を考えなくなるのは旅としてはつまらないなあと思う。
 そんなこんなでなんとか滝観洞にたどり着き、入場券を買うとヘルメットと雨合羽、それに長靴を渡された。入口のおじさんが「けっこうタフな洞窟だよ」(台詞は脳内で岩手なまりにして再生してください)とニコニコしながら言っていた。タフですか……はい、がんばります。

意外とチープな入り口。観光地化されていない感じがたまらない。
 で、入った瞬間からいきなりタフな感じ。入り口からしばらく非常に狭く、低い。縮こまって進んでいくと、何とか頭をあげられるところまで来たが、それまでに何度もヘルメットと天井の岩が激突している。ヘルメットがなかったら今頃血だらけで倒れているだろう。途中には映画「八墓村」のロケ現場となった場所もある。とっても暗い、優しくない鍾乳洞だ。




 600〜700mくらい進むと、先の方から轟々たる音が聞こえてくる。音が一番大きくなったあたりで目の前の低い岩をなんとかくぐってみたら、目の前には天井10m以上はあろうかという大きな広間になっていて、真ん中あたりから滝がでている。洞窟の中の大きな滝は大変珍しいようで、その現実味のない光景にはただただ驚くばかり。

 写真を撮ろうと思ったけど水しぶきがすごくて、広角レンズに交換するために少し戻って水しぶきのかからないところでレンズ交換をし、また滝まで行って写真を撮ってきました。しかし、暗いのでシャッタースピードが稼げず、ちゃんととれているかは微妙。とりあえず撮ったことは撮った。
 帰り道はというと、新しいバイパスが目の前に通っていることに気がつき、それで遠野まではあっと言う間に戻ってきた。あの行きの苦労は何だったんだ……。市街地に入れば遠野YHまではナビがちゃんと機能しました。バリ5でアンテナたってるで、大丈夫。都市部だし。
 遠野YHは雰囲気のいいアットホームなユースだ。ホステラーのおじちゃんもいい人だし、ヘルパーで3人の女子学生たちがきゃあきゃあ言いながら働いていた。いや、働いているときはきゃあきゃあ言っていたわけではないけど、雰囲気的にそんな感じ。まあ華やかで楽しい。
 一緒に泊まっていたもう一人のおじさんがいるんだけど、食事時に話しているうちに小学校の先生だと言うことが分かって思わず吹いてしまった。「何かおかしいことがありますか」と一瞬不思議な顔をされたので、「同業です」というと向こうも苦笑い。しばらく旅談義や教育談義で話の花が咲いた。そのおじさん、なんと今回18日間の行程を組んでいるそうで、「さすがに18日はきつい修行だね」と笑っていた。こちらも長い一人旅は何度かやっているので、その「修行」感覚は納得できる。思わぬところで意気投合した楽しい食事だった。追記しておくと、食事はかなりおいしい。下手なホテルの食事より、よっぽどおいしいことを特記しておく。遠野YH、おすすめです。





遠野ユースのまわり。日暮れの薄暗がりと田園風景が懐かしく、美しい。
 夕食の後は9時から談話室でみんな集まって何となく話をして過ごす。みんなと言っても客は僕とそのおじさんの二人。そこにホステラーとヘルパーが入ると、客よりスタッフの方が圧倒的に多いのだけど。とはいえヘルパーも半分客のようなもので、ホステラーさんの遠野案内を一緒に聞いていたり、セブン自慢を聞いてもらったりで楽しく過ごせた。

遠野YHの談話室。やさしくて温かい雰囲気がほっとする。

切り絵でカッパが。ポメラの上でぱちり。
 11時過ぎ、時計の音と一緒に談話も終了。談話室に一人のこり今日の記録をちまちま書く。だんだん眠くなってきた……明日も早い。そろそろ寝よう。