岩手、日本の原風景へ 8月10日 田沢湖〜玉川温泉〜八幡平

 今回は旅のスケジュールをそんなにタイトにしていないので朝が余裕があっていい。ご飯を食べ、一息ついてから準備する。一緒の部屋にいたライダーたちも出発していく。互いの旅の無事を祈るかのように、笑顔で手を振りあう。やっぱり出会いと別れを繰り返していくユースの旅はいい。カリーナEDの家族はまた今夜八幡平のユースで会うことになるだろう。今日は一日雨っぽいのが分かっているので観光もインドアでいくことにする予定だ。インドア観光とは、もちろん温泉のことを指す。 

天気は悪いがそれほど本降りではない。取りあえず田沢湖を一周してから出発だ。

たつこ像。田沢湖と言えばたつこ像。

田沢湖の周りはアップダウンのない緩やかな路だが、だからこそのんびり自然を満喫しながら走りたいものだ。
 田沢湖を抜けて北上ルートに入ると残念ながら雨が強くなってきた。ビキニトップから幌に張り替え、ひたすら走る。幸いそんなに激しく雨漏りするような土砂降りではないのが助かる。今日は沖野さんがいないからなあ(コラコラ)。目指すは玉川温泉。数年前東北を走った時には通過しただけだったけど、pH1.05という恐ろしいまでの酸性度、一箇所からの湧出量としては日本一の温泉、難病にかかった人たちが最後に訪れる湯治場として知られている。有名なブログ「たけくまメモ」にも、「この水が田んぼに流れると稲がすべて枯れてしまったことから、古くは「玉川毒水」と呼ばれ、昭和15年には毒を希釈するべく田沢湖に流し込む工事がなされたのでしたが、そのおかげで田沢湖は魚も住めない死の湖と化したというからハンパではない。」と紹介されている。
参考:たけくまメモ http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/06/post_0b02.html
 そのマジパネェ温泉を味わいたくて走っていたら……あらら晴れてきた。ラッキー。雲が切れてきてきれいな青空が。これはセブン乗りにとってありがたい。走っている時ならまだしも、駐車している時に降り続けられるとホント泣きそうなんスから。

晴れてよかった。

玉川温泉自然研究路なるものがあって、わき出ている園地の中を散策できる。

岩盤浴用の東屋
 温泉の噴き出す所や湯葉竹を見学できる自然研究路であると同時に、天然岩盤浴のできる湯治場でもある(むしろ湯治場におまけとして散策路があるといった感じか)。東屋の下ですし詰めになって岩盤浴(天然蒸し風呂?)する湯治客と、そこに入りきれないのでその辺の暖かい所で寝転んでいる湯治客とがいる。北投石といってラジウムを含む石があって、放射線治療的な効果も期待できるらしい。そしてまた広大な園地!がっぽんがっぽんわき出す温泉がまたすごい。近づいたら死ぬなって感じだ。(源泉98度っていうから、落ちたら死ぬのは確実だ)


広大な園地。荒涼とした様子は恐山にも通じるものがある。

そこかしこで、シュゴーと音を立てて穴から蒸気が噴き出す。硫黄で黄色くなっている吹き出し口はまるで悪魔の口だ。

流れる川も温泉の色で乳白色をしている。

湯畑。すごい長い。湯畑ヤバイ。

玉川温泉の大浴場。
 大浴場は混浴ではない普通の大浴場だが、広くて現代的な作りで入りやすい。一番驚いたのは浴槽が2種類あって、「源泉100%」と「源泉50%」の浴槽があることだ。普通の温泉だったら50%に希釈した温泉なんて怒られそうなものだが、pH1.05だと濃すぎて体に悪いんだろう。pH1.05なんてほぼ塩酸だ。さすが玉川温泉としか言いようがない。100%源泉に入った所、遠野で刺された足の虫さされが猛烈に痛みにおそわれた。入った瞬間「……がっ!」と思わず声が出るが、そこを我慢して踏み込んでいるとだんだん気持ちよくなってきた。そんなに湯温もたかくないし、じっくり入れるのでうれしい。
 また、寝湯があるのもいいところだ。俺超寝湯好き。分割り眠くなってしばらくうつらうつらしていたら、あっという間に1時間ぐらいたってしまった。飲泉もあって、何気なく飲んだらものすごい苦い。苦いなんて形容詞が生ぬるいくらい苦い。玉川温泉の飲泉の苦さを表現するために新しい形容詞を作り出していいくらい苦い。横の説明を見たら、そんなに一気にゴクリとやるものではないらしい。失敗。

きりたんぽ。岩手の旅だがここは秋田だし。
 そして玉川温泉を出発して八幡平に向かう。次は岩手に入り、八幡平の後生掛温泉だ。後生掛温泉はそんなに広い浴槽ではなく、湯温もちょっと高め。あまり自分としては長居できないのが残念だ。浴槽の一つに泥湯があって、鉱泥と呼ばれるミネラル分を豊富に含有した泥が底にたまっている。その泥を体に塗りたくりながら入るのはなかなか気持ちがよかった。
 ここにも自然散策路があって、歩けるようになっているがちょっと空模様も怪しいし、ガソリンがちょっと足りなくなってきているのが心配でやめておくことにした。八幡平の向こうまで抜けて人間と車に飯を食わすことにする。今回は旅にしては燃費がいまいち。旅の平均燃費は今まで20km/㍑ほどだったのだが、今回は16〜17km/㍑ほど。とはいえ普段の待ち乗り程度は十分出ているので心配はないだろうが。

後生掛の自然散策路を出発前にチラ見。
 後生掛温泉でぱらぱら降り始めてきたので、また幌をかける。結局八幡平の上に行くとじっとり降っていて、走る車も少ない状態。ひたすら走って松尾八幡平IC手前まで行ってガスを入れてきた。むしろ人間のご飯の方が食べる所がなくて、iPhoneだよりで小さなレストランを見つけて食べた。iPhone大活躍。携帯の圏内であれば超役に立つが、残念ながら圏外であれば驚くほど役に立たない。


小さなレストランで食べた食事。結構ボリュームもあっておいしかった。大盛りガッツリ系。
 そこからもう一度八幡平に向かう。さっきはアスピーテラインを走ったが、今度は樹海ラインから入り、遅れてきたレーサー氏のお薦め松川温泉の松楓荘(しょうふうそう)に向かった。樹海ラインに入る頃にはほぼ土砂降りと言っていいくらいに降っている。8月なのに寒い。松楓荘にたどり着く前にはすっかり冷え切って、玉川温泉後生掛温泉に入った分がすっかりリセットされてしまった感じだ(^_^;)。

車の中から見る松楓荘。雨が降っているのが分かるだろうか。
 露天風呂でもザアザア雨が降ってくるので、つかると熱いが出ると寒い、みたいな微妙な状況。本当は洞窟風呂というのもあったらしいが、寒くてすっかり忘れていた。温泉に入ることが目的化していて、もうクタクタなのに義務感で温泉に向かっているような状況だ。しかし川をのぞむ自然豊かな露天風呂もまたいい。雨に濡れるその風景もまた風雅というものだ。やや緑がかった乳白色の泉質も印象的だった。
 そこでもう4時過ぎ。もう時間も時間だからやめればいいのに、温泉が目的化している人間は止まらず、もういっこ温泉に向かった。樹海ラインからアスピーテラインに接続する所で、東に行けば今日の宿八幡平YH。西に行くと蒸湯温泉ふけの湯がある。迷わずハンドルは西へ。何とか暗くなる前にふけの湯にたどり着くことができた。

宿の建物も古めかしくていい。松楓荘ともども「日本秘湯の会」らしい。
 寒い中建物から離れた所にある野天風呂へと向かう。歩いている時点で浴槽がばっちり見える。もちろん宿の窓からもばっちり見える。ワイルドすぎる。やっぱりつかると熱いが出ると寒いのくり返し。それでもなんとか温泉を味わってきた。さすがに雨だと入ろうという物好きもいないみたいで、僕しかいなかった。



八幡平の中にある浴槽。自然と隣接しすぎ。
 ふけの湯をでると、もう薄暗くなってきている。雨脚もやや強くなってきているので急いで八幡平YHへと向かう。暗くて雨の八幡平など誰も走らないらしい。ふけの湯からは頂上まで九十九折りの登り道だったが、一生懸命走っても誰ともすれ違いも追いつきもしなかった。なんやかんやとクタクタになって(4箇所も温泉に入ってきたのに……)八幡平YHにたどり着いたら、どっかのスキー部の夏の宴会が団体で入っていて、すごい注目された(^_^;)。いつもだったらうれしくて相手をする所だけど、今は雨の中荷物を下ろさなくちゃいけなくて、それどこじゃない。幌をかけたままの超狭い車内の中で体をよじりながら必要な荷物を探す。狭い車内で妙な方向に体をよじった男が頭に付けたヘッドランプの明かりをたよりにパンツを探す姿は間抜けだ。
 それでも何とか部屋に入り、着替えて人心地ついた所で食事の時間になった。ユースは食事がおいしい所が多い。ここも例に漏れずおいしい。しばらくしたら田沢湖にいた家族もやってきて、笑顔でアイコンタクトをした。

節電で消してあるけど宿舎は整備されていてきれい。

食事は家庭的でおいしい。
 夜にはライダーのお兄ちゃん、お姉ちゃんと一緒にビール片手に旅談義。となりではスキー部の若人が自己紹介&一気で盛り上がっている(^_^)。一気文明が未だに残っていたとはおじさんも驚きだ。遅い時間になってからもう一人ライダーが到着してきた。話を聞くと車をよけてこけたらしい。ウインカーが折れているが、倒れた所がバイク屋の前で応急処置はしてきたらしい。人にも怪我はないし、大丈夫なことは大丈夫だけど……事故に遭うのはつらいよなあ。楽しい旅の思い出にけちがつく感じだ。

相部屋の狭い空間を工夫して自分の場所を作るのがYHの楽しみの一つだ。
 いろいろビール片手に旅談義もした所で、明日の朝ご飯の前に頂上に向けて「朝練」しに行くことで合意して就寝。今回セブンは隣のつぶれたホテルの軒先を借りて置いた。ボディカバーは掛けるけど、雨がかからない所におけるだけでもだいぶ違うから助かる。さらにとなりにはつぶれた温泉施設もあった。スキー場も併設されていたようだけれど、スキー客はより便がよい安比の方に取られてしまうらしい。大変だよなあ。