能登・佐渡・黒部の旅 その7(立山登山編)

8/7 立山登山
きのう、話の中でアリスが「立山に登って頂上のテンプルでお参りしたい」というので、一緒に立山登山をすることにした。もともと立山の二日目はノープランだったので、ちょうど良かったといえばちょうど良かった。聞くといわゆる「立山」である雄山の山頂まで2時間、帰りも2時間ぐらいだ。
どうもアリスは本当は宇奈月温泉に降りる予定だったのを、あまりに立山がきれいだったため、予定を変更してもう一泊していたとのこと。なので午後からは街におりて名古屋までいかなくてはいけないらしい。雄山に登って降りるくらいでちょうどいい時間だろう。

朝6時に朝食をとって、すぐ出かけようという約束をしていたのだが、朝の5時ごろ、激しい雨音で目が覚めた。外をチラリとみると、ひどい土砂降り。あちゃーと思いつつ、iPhoneで天気予報を確認すると6時以降からは晴れの予報が出ていた。山の天気はすぐ変わるというし、これは大丈夫かもと一縷の望みを託して食事へと向かった。
食堂は時間前から長蛇の列。山登りする人たちの朝は早い。アリスと僕で相談しながら食事をしていたら、何時の間にか雨は止んでいた。6時半ごろにはすでに晴れ間も見えてきている。やった、この調子だと山頂も晴れるかもしれない。

雨が止んだのを確認し、7時前には準備を整えて出発。登山口にある「室堂山荘」の横をを通った時に、先生らしい人が子どもたちに集合をかけているのが見えた。林間学校だろうか?そう思って前を見ると、遠く上の方で登山道を歩く子供達の集団が見える…そんなに林間学校がたくさん来ているのか?不思議に思いつつ、アリスも子供達が列をなして歩いている様子をケラケラと笑いながら見ていた。


最初は緩やかな登山道だが、途中いくつかの雪渓が横たわっていて、表面シャーベットの、奥の方は完全に氷の塊となっている雪渓の上を歩く。こちとら札幌育ちだから特に困ることもなく、むしろ凍ったところをツーっとスケーティングしながら滑っていくぐらいなのだが、アリスは香港出身で雪をほとんど見たことがない。歩き方もぎこちなくて悲鳴をあげながら歩いていた。


小一時間ほど歩いていくと、室堂山荘から最初のポイント、一の越まで上がって来れる。さっきまで見た子どもたちがトイレ休憩をして待っている。ここまで来ているんだから、立山の上の方まで上がるんだろうけど、つれていく先生たちも大変だよなあ。


アリスは一の越の山荘でスポーツドリンク(500mlで300円!)と軍手を購入。山荘の店員さんが台湾出身で、お互い中国語でやり取りしていて面白かった。しかしアリスの格好もたいがいだ。薄っぺらい上着にテンガロンハット、そして長靴だ。「君さあ、長靴でよく登るよね」と言ったら、「この靴ね、あたしのじゃないの。あたしの靴は本当はサンダルで、それだと登れないからみくりが池山荘で長靴借りたの」と言っていた。ちょ、あんたよくやるよ…。


話しながら歩いていると、アリスの根性入った旅人具合がわかる。日本マニアと言っていいぐらいいろいろなところに行っているし、スタンプ帳にはあちこちの観光地のスタンプが押してある。今回の旅は家族と来ているんだけど、途中から一人旅らしい。本当は今日は宇奈月温泉にいるはずだったんだけど、綺麗だったから予定を変更して立山にいることにしたそうな。そして一緒に登ってくれそうな俺を捕まえて山登り。やり口が手慣れたバックパッカーですな。


途中で休憩する子どもたちの集団。
 しかし、今回はうまく英語が通じない。前回の奈良ではオランダ人のゴッフェンとそれなりにコミュニケーションできてたと思うのに、アリスとはイマイチ。英会話をそれなりに話せるようになるともっとコミュニケーションできたのになあと思うけど…。オランダ人とはお互いがたどたどしい英語だから通じ合ったのかもしれない。

一の越で休憩する子どもたちが動き始めると山が渋滞するだろうから、子どもたちよりも先に動かなくてはいけない。アリスの買い物が終わったら早速出発だ。今まではコンクリートで固められた歩きやすい「道」だったけれど、ここからはガレた岩場をよじ登る「登山」という感じになる。





一応道はある、というのだけど、正直どれがどう道なのだかはよくわからない。よく踏まれるところは平らになっているから、多分ここが道かな?という程度。どっちにしろ上に行ったら絶対山頂には行くからいいんだけど。こっちがちょっと先行し、上から見ながらのルートをアリスに教えながら登っていく。下手に上がると浮いた石を下に落としてしまいかねない。そんなことしたら大迷惑なので慎重に歩く。
一の越から山頂まではさらに一時間ほど。時折三点確保で慎重に登らなくてはいけないが、小学生でも自力で登れるくらいだし、天候さえよければアリスのように薄着でもなんとかなる。初心者向けのちょうどいい登山という感じだ。
あと少しかな、というころになると、山にかかっていた雲が晴れて来た。眼下に今まで登ってきたルートが一望できる。みくりが池も綺麗に望むことができた。上を見ると山頂の建物が見えた。アリスに「あれってホステル?」と聞かれて「多分ね」と答えたけど、登ってみたら山頂の神社の社務所だった。嘘教えちゃった。

アリスに「あと五分で山頂!」と言うと「やったー」と大喜び。二人して一生懸命あがるとほどなく山頂に到着した。山頂は快晴。遠くに雲がかかっているので遥か遠方の山脈は見えないが、近圏の山々ははっきりと一望できる。黒部ダムのある方の斜面には、大きな雪渓が残っていて、ただただ驚くだけだ。近年立山の雪渓は規模は小さいものの、氷河として認められるものがあることがわかったらしい。それもまた驚きだ。

遥か下にみくりが池とみくりが池温泉が見える。望遠いっぱいでやっと見える。

雄大な景色。

てっぺんにお社があるのが見える。

山頂の社務所からさらに上に立山神社の遥拝所がある。500円の参拝料を払ってさらに上まで登っていく。夏の間は宮司さんが常駐していて、お祓いをしてくれるのだ。アリスはこれが目当てだったらしく、超ワクテカしている。5人くらいでお祓いをしてもらい、祝詞を聞く。立山は日本の山岳信仰の頂点の一つだ。あとは白山神社と富士山の浅間神社が三大山岳信仰となる。白山も登ってはいないけど下の神社には言ったし、富士山も五号目にはいったから、一応みんな行ったことがあると言えるかな…?

お参り行ってきます〜




大汝山、富士の折立方向を望む。雲の向こうに見える一番遠いのが別山

雄大な景色にしばし呆然とすごし、早めのお昼ごはんを食べる。しばらく休憩していると、子どもたちが登頂してくる。アリスが「100人くらい?」と聞いてくるので、だいたいの学級規模を予想して60人くらいかな、と答えたのだけど次から次へと登ってくる。しかしよく見ると帽子やジャージがちがう。あっとまに山頂は子どもだらけになり、先生たちの引率の声が響く。
近くにいた宮司さんに「たくさん登ってきますね」と話しかけてみたら、なんと夏休みになると毎日子どもたちで大渋滞らしい。富山の半分くらいの小学校では、夏になると立山に登山にくるのが通例だというのだ。そういう宮司さんもまた、小学生の頃に登ってきた記憶があると話していた。やはり立山に登るというのが、越中人として大人への重要なイニシエーションらしい。


アリスと目配せして、そろそろ降りることに。彼女は今晩名古屋に泊まって、明日には香港に帰るということだった。2〜3時には立山を降りることにバスに乗らないといけないということで、いよいよ下山。

ほっそい道が見える。
 下山を始めるとガスがかかり始めて少し雨混じりに。そこでも登ってくる子どもたちとたくさんすれ違うので、よけたり待ったりしながらの下山になる。途中から足元の石が崩れてけがをした人なんかもいて、ちょっと心配だったがあとからアリスがケーブルカーの中であったらしく、ちゃんと大丈夫だったと教えてくれた。
下りの道も2時間くらい。下に降りて食事をし、温泉に入り、アリスと別れる。たどたどしい英語だったけど、ちゃんと相手をしてくれたアリスに感謝。フェースブックでつながっているからお互いの様子は別れた後もなんとなくわかるのが今風だ。






みくりが池山荘に行くにはさらに奥へと進む。

さらに下にはキャンプ場も見えた。さっきの地図でいう「雷鳥平」
アリスと別れたあと、こちらはあと一泊あるので「雷鳥荘」へと向かう。みくりが池山荘に連泊できなかったので宿を帰ることになる。みくりが池からさらに奥の方に行き、尾根ひとつ向こうに雷鳥荘はある。地獄谷の硫黄臭がひどく、途中せきこんでしまうほどの場所もあった。尾根を降りると一気に電波状態が悪くなる。ソフトバンクは圏外。残念。

みくりが池温泉の相部屋はベッドだったが、雷鳥荘の相部屋は布団部屋だ。自分の場所を決め、もそもそと布団を敷く。今回は10畳くらいの部屋に5人ですごすことになる。ちょっとユースっぽい雰囲気でもある。
夕食は大食堂で食べる。みくりが池温泉ほどではないが、十分豪華だ。相部屋で8000円ほどなのだが、それでこれだけ食べられたら御の字だ。そして温泉は地獄谷から引いた天然温泉で、見事な展望風呂。大日岳が一望できるものすごい展望。窓の向こうに人が歩くとろこが存在しないので、風呂から見える景色はすべて自分のものという超贅沢な風景である。




赤く染まる立山連峰が美しい。

夜になると綺麗に晴れたので天体観察会が行われた。でかい望遠鏡で土星などを見せてもらい、一面の第パノラマを楽しめる。今回はiPadを持ってきているので、StarWalkを使って星を調べてみた。iPadを見る方に向けると、電子コンパスとジャイロでそっちの方の星座を調べてくれる優れものだ。
射手座、蠍座などのメジャーどころはもちろん、三角座などというマイナー星座まで、調べながら見るとよくわかる。初めてペガサス座を意識的に観察することができて嬉しかった。しかも流星群もみられて最高。大きな流れ星をいくつも観察することができた。
そばにポータブル赤道儀を使って星の撮影をしている人がいて、話しかけたら元天文部の人だった。あちこちの星に関して詳しい解説をしてくれて、ちょっとお得気分。その人の解説で空を見上げると天の川が見事に広がっていて、真ん中が黒く空いているところまで観察できた。天の川をここまで見ることができたのは東北のランプの宿以来かなあ。今までの人生でもっともはっきりと星をみた夜だったと言えるだろう。
ずっと観察していたかったが、どうにもこうにも寒い。北海道の11月ぐらいの気温だろうか。長袖シャツとゴアのレインコートだけでは防寒にならなくなってきたので宿に引っ込むことにした。もう一度温泉に入り入って温まり直し、今日の一日を終えた。ロビーにはビールが売っていて、11時までは談話室で過ごせるのもよい。